2008年07月19日

タイム・トルーパー 小林源文 感想

タイム・トルーパー (SEBUNコミックス)
小林 源文
4418015027



タイムスリップものは状況の解説がややこしいので嫌いです。

もともと数学が大の苦手で、パズルも嫌い――己の直感と刹那の閃き(電波受信とも言う)のみを頼りに生きている僕にとっては、複数の要素をロジックに沿って組み上げて状況を把握せねばならない行為というのが苦行でしかありません。

なので、本作品の設定部分に関しては極限まで枝葉を端折って解説します。
22世紀の火星植民地軍の兵士5人が、第二次世界大戦当時の欧州にナチスの原爆開発を阻止する為に送られてくるというもの。ここに色々とパラドックスが仕掛けられてはいるものの、解説がややこしいので割愛。
実際本編の方はパラドックス云々はあまり関係なく楽しめますので。


未来人の出現場所がヨーロッパ反攻作戦開始直後のヴィレル・ボカージュ近辺なので、作者の作風上ミヒャエル・ヴィットマンが登場したのは予想通りですが、「コンバット!」のサンダース軍曹と小隊の仲間達まで出てきたのはワロタ。
こういう遊び心が実に楽しい。
また、未来人たちは当時の人間達や戦争の流儀を野蛮と言っていますが、彼ら未来人の装備するヘルメットには兵士を洗脳してあらゆる命令に従順なロボトミー化する装置が標準装備されていたりとなかなかに毒が利いています。
この辺りは棍棒で殴りあう未開人と、爆弾で都市ごと丸焼きにする現代人とどっちが野蛮だという皮肉にも通じていて、人類の業の深さを感じさせるものがなくもないですね。


おそらく源文漫画の中では一番ギャグの要素が強いかもしれません。
佐藤中村コンビものやウサギのNAM戦ものもそれなりにコミカルではあるのですが、敵味方共に同程度の武器を使用している手前、いつ弾を喰らって死んでもおかしくない緊迫感は常にあります。まして主人公達が歩兵である以上、攻撃ヘリや戦車は絶対的な恐怖の象徴であり、死神そのものである訳なんですが・・・。

この作品の場合未来人たちの装備している光線銃は戦車の装甲すらバターの様に切り裂き、ヤーボの中でも特に理不尽な頑丈さを誇るP-47も簡単に撃墜してしまう反則兵器だけに凄惨な描写をしている筈の戦闘シーンが、どこか現実感の無いB級映画の様なシュールさを強く感じさせます。
この辺、かわいらしい動物を擬人化する事で逆説的に凄惨さを強調しているウサギのNAMものとは好対照ではあります。


と、そういう話は置いといて、何と言ってもSS大佐のケストナーが萌えますねw
H.G.ウェルズのファンである彼は未来人たちを火星からの侵略者と思い込んで(火星から来たという点に関しては間違ってないけど)、何とか捕獲しようと躍起になる訳ですが・・・。
もうやる事成す事全て裏目に出て、最期はヒムラー閣下の不興を買って降格&東部戦線送りと言う涙無しには語れない過酷な運命に。

なお、新装版には書き下ろしで東部戦線に送られたケストナーを描く短編が追加されていますが、哀れすぎて何も言えないww



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2008年04月29日

碧の孤狼 滝沢聖峰

碧の孤狼 (アリババコミックス)
4418061258



本土防空戦をテーマに描かれた短編集にして、作者初の単行本。

この本が出た当時世は空前の仮想戦記ブームだった事もあって、幻の試作機や架空の兵器を取り扱った話ばかりなのが特徴でしょうか。
特に第1話のキ-108に搭載された生体レーダーや、第2話の呪術で強化された震電に顕著。

とは言え、生体レーダーにしても呪術にしても、そんな事までやらなければならない程に追い込まれた状況を感じせるものはあり、日本が余裕で大勝利を重ねていく仮想戦記の類よりは当時の空気をリアルに伝えていると思います。

それ以外の話はフィクションとは言え、もしかしたら在り得たかも知れないというレベル。
蒸気冷却で空気抵抗を抑えて高速化を計った飛燕U型改とか、ニッケルが致命的に不足しているという窮状を踏まえた上で、苦肉の策として設計された雰囲気なかなかに面白い。

そして、そんな飛行機を操る操縦士たちも変に美化されていないのが心地良いです。
登場するのは操縦士としての誇りや、時には家族の仇と言った、割と個人的な感情で戦っている人たちばかりですが、敗北がほぼ決定的になった状況下で命を懸けて戦うには、御国のためだとか、大東亜なんちゃら圏がどうのこうのと言った抽象的なプロパガンダでは役不足なんでしょうね。


初単行本ですが作画水準が高く、この手の作品の肝である兵器のディティールも良く描けていると思います。
描く作品がことごとく負け戦メインで、作品に悲壮感が強く漂っているせいか知名度はあまり高いとは言えない作者ですが、個人的には好き。


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2008年02月24日

トーキョー・ウォーズ 小林源文 感想

トーキョー・ウォーズ
小林 源文
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まだソ連という国が存在した頃に描かれた「レイド・オン・トーキョー」という漫画の復刻版です。
新たに与党となった連立政権により、日米安保が破棄され、ソ連が侵攻してくるという話。
しかも、新政権はソ連側に協力し、孤立した自衛隊はクーデータ軍扱いされながらも、自由と民主主義のために(以下略)。

導入部に関しては置いておくとして、いまや源文漫画に欠かせないキャラクターとなった佐藤、中村コンビの若き?日の姿が見られるのは貴重。
この物語当時の佐藤大輔二尉は、現在のデブでヤクザ紛いなドキュン三佐ではなく、経理課勤めでライフルも碌に撃った事の無い青年でした(!)。
最初戦場に出た時は、ただただ敵の猛攻の前に竦み上がり、チャンスあれば逃げようとしたり、降伏しようとしたり・・・。

ソ連との戦いは僅か4日間だけの短い戦闘ではありましたが、佐藤二尉は戦場に狩り出されて3日目で、目付きが変わり、投降した敵兵を皆殺しにする素敵な人に変貌してしまいました。
顔にはトレードマークのオットー・スコルツェニー傷が入り、アジア一危険な男へと生まれ変わった瞬間です(笑)。
いやあ、先にオメガシリーズ等で、ヤクザな佐藤三佐を見慣れていただけに、この若き日の姿には衝撃を受けました。
それにしても中村は何一つ変わってないんですよね・・・。

戦闘描写では、終盤の当時最新鋭だった90式戦車の大活躍に胸がすきます。
特に基地前に停車していた敵のBMD-1を紙切れの様に吹き飛ばして乱入してくる姿には濡れましたw
今では90式は、その重量故に北海道でしか満足に運用できないとか、失敗作だとか言われてまして、つい先日には軽量化された新型戦車の試作型が公開されたりしてすっかり肩身が狭い状態ですが、登場した時には遂に日本もアメリカやドイツと同等の戦車を保有するに至ったと大いに話題になったんですよね。

余談ですが、例の新型はちよっとスマートすぎて、90式に比べると鉄の塊感が足りないのがいかんです。
もっとも、74式以来日本戦車伝統の姿勢制御が、新型では左右傾斜も復活するみたいなので、そうなると新型萌えとなる可能性大ですがwww
90式はお辞儀しか出来ないのが不満でしたからw


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