2008年07月22日

ヴィンランド・サガ 1巻 幸村誠 感想

ヴィンランド・サガ 1 (1) (アフタヌーンKC)
幸村 誠
4063144232




今更ながらヴィンランド・サガです。
結構前から周囲の評判は耳にしていたので、いつか読んでみようと思いつつズルズルと来て・・・まあそう言う事です。


物語に関してはもう説明する必要も無いですね。11世紀のヴァイキングの物語。
タイトルになっているヴィン・ランドと言うのは諸説ありますが、おそらくニューファンドランド島の事ではないかと言われています。(別の説によるともっと南の北米大陸本土だとも言います)まあこの辺りに関しては1巻では深く触れられてはいないので、軽く流しておくとして。


第一話からその圧倒的な迫力にすっかり魅了されてしまいました。
緻密にして重厚。躍動感に満ちた作画は戦場のリアリズムをこの上ない形で活写していて、さすがプラネテスの作者だと唸らされます。

しかし個人的に一番強く感じたのは、やはり当時の一般的な人間達の命に対する価値観です。
現代人の感覚からすると恐ろしくドライなもので、目の前で部下や仲間が斃されても感傷的になる事さえほとんどありません。
それは命のやり取りが日常茶飯事である戦士階級の者たちだけでなく、トルフィンの姉の様な一般人にしても同様。
もっとも、現代においても某隣国や十数年前まで存在していた某社会主義連邦、そして60年前の我が国もこの時代の人間に負けない位に命が軽く扱われていた訳ですけども。


そういう背景を踏まえて読んでいると、トルフィンの亡き父トールズの感性は周囲と比べて著しい違和感を感じてしまう位に現代人・・・それも戦後の、良くも悪くも甘い日本人の感性に近い。
それは物語の世界に読者を感情移入させる上で必要な措置なのかも知れませんが、同時にそういう感性を持つ人間にとってこの時代は実に息苦しく過酷な世の中であった事も想像されてしまって、この先の展開に一抹の不安を感じさせています
。要するに鬱展開の予感と言う奴ですね。


トルフィンがヴィン・ランドの大地を踏みしめるのはいつの日か、見守って行きたい作品です。



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2008年07月07日

蒼天航路 5巻 李学仁 王欣太 感想

蒼天航路 (5) (モーニングKC (482))
李 学仁
4063284824




黄巾の乱の終結から董卓による権力の簒奪、そして反董卓連合の結成までが描かれる第5巻。


この当時はまだ袁紹と曹操は敵対する関係ではなく、共に反董卓の大義のもとに立ち上がる事となるのですが、作中では宦官誅滅と言う大義名分を董卓に与えたのが袁紹と言う事になっていて、策を弄するわりに思慮の浅い袁紹と、袁紹が引き起こしてしまった混乱を利用して天を狙う曹操という対照的な描かれ方をしています。
たしかに袁紹の人となりは三国志原典に忠実と言うか、陳寿の評した姿そのままではありますが・・・。

なんと言うか、腹に一物秘めた人々が虚虚実実の駆け引きを繰り広げる三国志世界においては、この底の浅さが一種の愛矯になっているよう感じられるのは笑うべき事なのか。
判りやすく一言で言うならヘタレ。
全日本ヘタレキャラ愛好会会長であるところの僕にとっては、いろいろな意味で目が離せない人物の一人となっています。
ちなみに三国志演義だと確か董卓を暗殺すべく曹操が城に乗り込むも、呂布に看破されて赤兎馬をがめてトンズラをこくんでしたっけ。演義ではヘタレ役が曹操なんですよね。


演義で思い出しましたが、呂伯奢のエピソードも蒼天verと呼ぶべきものに改変されています。
史実では呂伯奢の裏切り、演義では曹操の猜疑心、いずれのケースにおいてもジェノサイドENDとなるエピソードですが、蒼天では曹操の配下に組み入れるという展開。商才と財力を活かして陰から曹操軍をサポートする役回りとなる訳です。
この辺はちょっと出来すぎかなという気もしますが、この作品はスケールの大きな演劇じみた部分があるのでこれはこれでアリなのか。

ともあれ反董卓の戦いは始まったばかり。
徐栄に煮え湯を飲まされたりしていますが、果たして。
個人的には蒼天董卓は非常にピカロな魅力のある人物と感じているので、それなりに壮絶な最期を期待したいところです。



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2008年06月30日

ワッハマン 11巻 あさりよしとお 感想

ワッハマン 11 (11)
あさり よしとお
406315064X




遂に最終巻となりました。単行本は連載時とはほぼ別のものに描き直されたそうですが、当時アフタヌーンを購読していなかったので連載時の結末を知りません。
また単行本自体も既に絶版となっていて、オークション等を利用しないとなかなか入手できない現状、連載時のラストも収録された完全版の再販が待たれます。


さて。
・・・最後に明かされた物語の構図、それはこの物語世界そのものがはるか太古の昔から"パパ"によって作られてきた壮大な舞台装置に過ぎないと言うものでした。
永遠の生命と膨大な知識によって幾つもノ文明を作り上げては滅ぼし、時間と言う煉獄の中で足掻いてきた"パパ"。
彼が待ち望んでいたのは、彼の作った世界から自らに死を――煉獄からの解放を与えてくれる存在が生まれ、全てを終わらせてくれる日が来ること。
ワッハマンはまさに彼にとっては待ち望んだ解放者に他ならない存在だったという訳です。

しかし、パパと同等の不死身の力を持つワッハマンにとってパパに死を与えるということは、今度は彼自身が孤独な時間の煉獄に繋がれる事に他なりません。
これまでワッハマンが積極的にパパとの対決する事を避けてきたのはその事に気付いていたからなのでしょう。
だからこそパパはワッハマンと関わった人々にとことん悪辣な所業を行い、何とか彼の怒りに火を付けようとした。
パパが手段を選ばないのは冷酷無比だったからと言うよりも、それだけ必死だったとも言えそうです。


ワッハマンとパパの因縁に関してはこの位にして。
最終巻だけあって他の面子にも活躍の場がしっかりと与えられていたのは嬉しい限りでした。
試作品はやられメカの代名詞的存在となっていた梅田のPSが遂に完成を見た事、そして復活した長沼が梅田のPSを着てあのイシュタルをさほど苦戦する事無く倒してしまったくだりなどはまさに胸がすく展開と言えます。
長沼の体術に追随できるPSを完成させるとは、恐るべきは梅田脅威のメカニズム。

もっとも、イシュタルの正体がルミちゃんだった事、そしてルミちゃんの人格は自分がイシュタルである事を一切知らなかった事など、鬼展開としか言い様の無いトラップも組み込まれている辺り、さすがはダークゾーン。
随所に登場していた黒い外套の女性がイシュタルだと思っていただけに、これは不意打ちでした。
最後の最後まで油断の出来ない漫画だったなあ。


・・・と言う訳でワッハマンこれにて終了。
最初はほのぼのとしたコメディだったのが中盤辺りからシリアスな空気が漂い始め、終盤は鬼の様な展開で、これまでのあさり漫画とは一線を画する作品です。
また、幾つかの謎が残ったままとなりましたが、比較的読者の想像で埋め合わせられる部分がほとんどなので尻切れ蜻蛉な印象はありません。
個人的には大いに楽しむ事が出来ました。
本当これ、再販は急務ですよ。



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2008年06月29日

ワッハマン 10巻 あさりよしとお 感想

ワッハマン 10 (10)
あさり よしとお
4063150631




ああ、これは難解だなあ。


今回物語の中心になるのはオシリス。正確にはゲルダと融合したオシリスです。
破損したゲルダを生かすべく、同じく破損したオシリスと二個イチしたのは何となく判るんだけど、過剰なまでに醜く重装化されていくのは一体何のためなのか。
インガーは生きていて欲しかったと言うけど、それなら他にも方法があったと思うのですが・・・。

あるいは自らの因果ゆえに組織に狙われる身の上だからこそ、ゲルダにも自衛能力を持たそうとしてあの様な魔改造を施していたのか。
それとも科学者ゆえの深い業か。

いずれにせよ改造を施した当人はイシュタルと戦い、ゲルダと共に自爆して果てた訳ですから本当の事情を知る事はもう不可能。
8巻の感想でも使った言葉ですけど、語彙が乏しいので敢えて再び使い回しします。なんという後味の悪さ。


うーん、それにしてもこういう幕切れだと、オシリスが登場した意味と言うか、彼女が物語の中でどういうポジションにあったのかが良く判らなくなってきましたよ。
レミィやイシュタルには明快な役回りがあるのに・・・。
逆に言えばそうした立ち位置すらはっきりしないままに果てる悲運の役どころだったのかも知れませんが。


ともかく、この巻を持ってゲルダ&オシリス編は終了。いよいよ次は最終巻となります。
ゲルダ&オシリス編の陰に隠れがちでしたが、パパに対する反乱や行方知れずとなった長沼など気になる展開も進行中です。果たしてどんな結末を見せてくれるのか・・・?
噂では大半が書き直しとなり、連載時の最終話とは全然違う結末なんだそうですが。



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2008年06月23日

ワッハマン 9巻 あさりよしとお 感想

ワッハマン 9 (9)
あさり よしとお
4063150623



お遊びはここまでだ――と言わんばかりに攻勢に出たパパ。


1万年の時を生きてきた永久不変の肉体を持つワッハマンですが、その肉体に反して精神の方は人間と同じものでした。
長い時を生きる間に彼の精は、大半の時間をあたかも経年による磨耗と風化を避けるが如くに休眠状態で過ごすようになり、ごく限定された状況下でのみ短時間覚醒するという状態になっていました。
オシリスの自爆を伴う精神攻撃は、その休眠していた魂を完全に機能停止させ・・・結果ワッハマンは真の意味での生ける屍に。

そしてパパは、あとはワッハマンが存在した事実を知るものを抹殺する事で、彼の存在そのものを完全に消し去る事が出来ると言わんばかりに長沼達の抹殺を計る。
9巻の見所はパパによる大攻勢に立ち向かう長沼達と、機能停止してしまったワッハマンが復活に至るまでの顛末の二つ。
特にパパによる攻撃はアンドロイド軍団のみならず警察特殊部隊まで総動員した大掛かりなもので、彼の持つ絶大な権力が窺い知れます。

それにしても長沼の強さは回を追うごとにトンでもなくなっていて、遂に.50口径アンチマテリアルライフルによる狙撃を、マズルフラッシュを視覚で認知して避けると言う人間の反応速度を大幅に逸脱した状態に。
囮役に使われた刑事の人、顔のすぐ脇を.50口径弾が通過したら耳が一部欠ける程度では済まないと思うんですが・・・流石にリアルに描くと色々とグロになりそうなので問題ありなんでしょうね。


一方のワッハマンですが・・・なるほど、作中ではオリハルコンの共振現象がどうのこうのと言われていましたけど、つまる所は彼を殺したのは孤独と絶望だったという訳ですね。
彼の唯一の存在する理由となっていた女性が彼の眼前で死ぬ事を演出する事で精神を完全停止に追い込んだ・・・と。
だからこそ、彼自身が自分は決して孤独ではないと言う事を悟る事で復活を果たせたのではないでしょうか。
この辺は僕の語彙では巧く説明できないので、キルケゴール辺りを引用してお茶を濁しておきます(汗)。
本当はこの手の引用は厨二病臭くてあまり好きではないのですが・・・。

『人間は精神である。しかし、精神とは何であるか? 精神とは自己である。しかし、自己とは何であるか? 自己とは、ひとつの関係、その関係それ自身に関係する関係である。あるいは、その関係において、その関係がそれ自身に関係するということ、そのことである。』

復活に至るまでを読んで貰えれば、大体が上の死に至る病の序文に沿う形で描かれているのが判ると思います。


しかし終盤のあの展開は一体何なんだ・・・。



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2008年06月19日

ワッハマン 8巻 あさりよしとお 感想

ワッハマン 8 (8)
あさり よしとお
4063150615



大陸から奴がやって来た。


以前働いていた某航空会社系列のホテルに中国の女性が何人かいまして、その人たち共通の印象ですけど、中国人と言うのはかなり強固な自分の形を持っていると感じています。
良く言えば強い意志を持っている、悪く言えば頑固で融通が利かない。
この辺りの気質は国土が置かれた環境や歴史によって形成されてきたものなので、それをしてどうのこうのと言う問題では無いのですが、日本人と中国人の雰囲気の差はこの辺にあるのかなあと思ってみたり。

という訳で、中国から本作品最強と目される拳法家の女性が文字通り上陸(当然不法入国)。
ワッハマンを追っ手大陸から三浦半島まで海を泳いで渡って来たというのですから、そのデタラメなまでに強い意志が窺えます。
しかし、結構出番も多いし、もしかすると長沼とフラグが立つ可能性もあるキャラなのに、名前が無いのはどんな差別ですか?
謎の坊さんも名前が無いし、この漫画曰くありげなのに名前すら与えられなかったキャラが多いんですよね。


それはともかく、この中国女性とオシリスとの婿取り?バトルが一応は8巻の山場でしょうか。
なんだかグダグダな気がしなくも無いですが、このバトルで人間相手に不覚を取った事がオシリス暴走の一因になっていると思うのでそれなりに意味はある様です。
それにしても"パパ"は最初からオシリスを自爆用機として設計していたんでしょうね。
オシリスのコアから出てきた女性のアンドロイドとか、あんなのはワッハマンとの一万年前の因縁を持つパパにしか知り得ない存在がモデルですし。
打倒ワッハマンの為に強くならねばと言う焦燥感に駆られて自らの命まで賭けた"進化"を行ったオシリスが、進化の果てに辿り着いた採集形態はただの自爆兵器だった・・・。
なんと言う後味の悪さ。
こんな設計をしたパパの悪辣さに胸糞が悪くなります。


一方、スイスからようやく台湾にまで辿り着いたレミィは、台北で自分自身の試作型と対面。
レミィ自身が完成した事によって見捨てられた試作型の姿は、イシュタルが完成した事で見捨てられたかつてのレミィを思い出させます。しかしこの試作型は、パパへの未練から一般人をも巻き込む非道な戦い方でもってレミィに襲いかかり――敗れ去りました。

レミィはパパに見捨てられた後、長沼達が彼女の受け皿となりましたし、ワッハマンとの間にも友情めいた感情が生まれました。この点こそがレミィと、その試作型との一番の差だったのでしょう。
いわばそうした幸運の有無が分水嶺となった訳で、もしレミィに受け皿となる存在が無かったら、あるいは試作型と同じ運命を辿っていたのかも知れません。
なんだか今回パパの非道さばかりがクローズアップされているなあ。


・・・と言う感じで、微妙にカオス状態ではありますが、物語は着実に最終局面に向かいつつある雰囲気です。



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2008年06月15日

ワッハマン 7巻 あさりよしとお 感想

ワッハマン 7 (7)
あさり よしとお
4063150607



パパはロリコンかとばかり思っていたのですが、もしかして違った?


対ワッハマン用の3号機オシリスがロールアウト。
直接パパから指令を受けたりしているシーンはまだ無いので、パパが作ったかどうかも現時点でははっきりとはしませんが、イシュタルと同じデザインラインを持っている事と、ワッハマンと戦う事を第一義としている事、そしてパパがイシュタルにも飽きたと言っていた事・・・を勘案すれば、パパ製の新型機と考えて問題ないでしょう。
レミィと同じく羞恥心が無いとことかにも共通点がありますし(笑)。


今回そのオシリスとイシュタルが、米軍ヘリ内部でワッハマンを巡って軽く衝突するシーンがあるのですが、このシーンに本作品最大の仕掛けのヒントがあるんですよね。
最初この仕掛けの種明かしを見た時は、いやいやこれはサプライズの為の場当たり設定だろう・・・と思ったのですが、成る程こうして再読してみると、場当たりではなくちゃんと辻褄が合ってます。
ごくごく初期からこの設定が盛り込まれていたんですねえ・・・。


で、スイスに落下したレミィの方ですが、彼女を拾って修理したインガーという老人の因果に満ちた人生が描かれたりしてまるで別の漫画ですw
子供の頃初恋の相手の女性を死なせてしまった件、ナチスに協力して死なない兵士の研究をしていた件・・・。
そうした過去の因果が、ゲルダという悲しい機械人形の存在や謎の組織(モサド?)に命を狙われる立場に直結しているんですね。
やっぱり別の漫画だww


しかしレミィは本当に変わりましたね。パパに甘えていた初期の彼女に比べると、行動の一つ一つに強い意志を感じます。
次の巻ではいよいよレミィも日本帰還か?


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2008年06月12日

ワッハマン 6巻 あさりよしとお 感想

ワッハマン 6 (6)
あさり よしとお
4063150593


レミィが良い子過ぎる件について。

あー・・・。
実は11巻まで読了して、色々な謎の解答を知ってしまったのですが・・・。
それでも作品の魅力が何ら損なわれず、再読、再々読に堪えるところが凄い。


今回は中盤最大の山場とも言える、月面からのワッハマン回収作戦が大きな見所です。
最初のうちはレミィの駄洒落コスプレが登場したりと、軽いノリの話かと思っていたのですが、月面で無事ワッハマンとレミィが再開し、地球帰還コースに入ってからが怒涛の展開。
パパの妨害によって帰還コースから逸れてしまうと言う緊急事態に際して、レミィの取った捨て身の行動にはただただ驚かされました。
パパの作った一連のシリーズの中では戦闘能力こそ劣るかも知れませんが、一番完成度の高い「心」を持っているのは間違いなくレミィ。
6巻の主役は彼女です。

で、何とか地上に戻れたものの、大気圏ではぐれてしまった二人ですが。
ワッハマンの方は例のごとく世界を舞台にトボけた旅を続けています。
大破したレミィはスイス山中に落下、時計職人インガーに拾われて修理中ですが、こちらはどう見てもシリアス展開ですね。ゲルダの存在とか、シリアスな雰囲気が漂いまくっておりますから・・・。


巻を通してのテーマめいたものはあまり感じられなかったのですが、レミィの立ち位置がこれ以上無い形で明確にされたと言う意味では印象深い巻でした。

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2008年06月11日

ワッハマン 5巻 あさりよしとお 感想

ワッハマン 5 (5) (モーニングKC)
あさり よしとお
4063150585


永遠に生きる事は、永遠の煉獄に囚われているのと同じ事。

不死身の肉体を持つワッハマンとパパ、彼らは互いの存在を意識しあう事で生きる目的を見出している様な気がします。ならば、このまま戦ってどちらかが斃れれば。勝ち残ったものは――。


はい、中盤に来て何やら重い雰囲気が見え隠れし始めたワッハマンです。
数あるあさり漫画の中でもこの作品は特にダークゾーンらしいですが、確かに納得ですね。
るくるくでは何か突き抜けたというか、悟りを開いた感じが漂っていますが、この時点では生きる事に対する迷いの様なものを感じてしまいます。
謎の僧侶の台詞、バブルの狂乱に取り残され、ビルの谷間の小さな家でひっそりと暮らす老婆の姿、こうした部分部分に、人生の意味を模索する姿が透けて見えるんですよね。
気のせいなのかなあ。


・・・とは言え基本はギャグ漫画。
テストドライバー役を買って出てとんでもないマシンに乗せられたり、月面に孤立した飛行士を救出すべく月に送り込まれたりと言った荒唐無稽な展開は健在です。
特に月面編はかなり無茶。
打ち上げてさほど時間がたたないうちにもう月に到着(自由落下)ですから、一体どんなロケット使ったんだよという感じです。
最期には着陸船のパージで月面に取り残されてしまう訳ですが、一体どうなるのか。
それ以前に物語が全く進まない巻だった気がするんだけどいかがなものか。
レミィなんてニート生活満喫中だもんなあ・・・。
やっぱり色々と迷っている(笑)。

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2008年06月05日

ワッハマン 4巻 あさりよしとお 感想

ワッハマン 4 (4)
あさり よしとお
4063150569



深海を発してカンボジアに出現、再び姿を消して今度は小笠原に上陸・・・。

アトランティス製の超兵器にとっては陸地と陸地を隔てる海原など何らその行動を妨げるものではありません。
もっとも、予想に反して日本に帰ってくるのは早かった気がしますが。
帰巣本能とでも言うか、長沼やレミィ達のいるあの街こそが今のワッハマンにとって帰るべき所になっているのかな。


帰るべき所と言えば、ワッハマンは帰るべき所を見つけたようですが、逆にレミィは帰るべき所を失くしてしまいました。
"パパ"にとってはレミィなど所詮対ワッハマン用兵器の一つでしかなく、より新型の兵器が完成すれば必要ないものになってしまうのでしょう。
それが例え人型で人と変わらない人格を持っていたとしても、彼の目的を完遂する上で役に立たないものならば逡巡する事無く処分する。
最初からいつかは処分するつもりなら、何故人格を持たせたりするのかは理解しづらいですが、イシュタルの言うように単なる趣味・・・つまりはドSという事なんでしょうかね。
それとも本人にしか理解できない何らかの考えがあっての事なのか。

この巻は間違いなく序盤における物語の転換点でしょうね。
それにしてもまさかパパに捨てられたレミィが長沼達の下に来るという展開は予想外でしたが、長沼とレミィのレベルの低い喧嘩はこれまでも見所の一つではあったので、これはこれでアリかなあ。


そうそう、ミユキさんの話に関しては・・・まあ、当時としてはこれは極めて正常な反応ですよね。
むしろ今みたいに男の娘萌えなどというジャンルが確立されている(少なくとも僕の中では確立どころか天を衝く勢いでそそり立っております・・・笑)状況の方が変なのです。
いや、厳密には男の娘と、性同一性障害は違うんですけどね。
事情を知らない第三者視点から見たらそう変わらんとは思いますがw


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2008年06月02日

ワッハマン 3巻 あさりよしとお 感想

ワッハマン 3 (3) (モーニングKC)
あさり よしとお
4063150542



ワッハマン短期集中読破中。
いや、単に友人に借りてる本ですから、あまり長い間借りたままというのもアレなので。


新キャラのルミちゃん(21歳。見た目は幼稚園児)の登場でますます混迷の度を深めるワッハマン。果たして噂のシリアス展開とやらは本当にあるのか。
あるとして、一体何時から始まるのか・・・全く先が読めません。


ルミちゃんのインパクトに全て掻っ攫われた感はありますが、実は今回は結構大きな出来事が幾つかあって、そのうちでも最も後の展開に響いて来そうなのが、イシュタルの存在。
ワッハマンのオリハルコン製ボディに傷を付けられる攻撃力は大きな脅威ですし、外見もいかにも機械然としたゴーレムやハンババと違って生物的でもあり、ハンハバよりも世代が上の戦闘機械であることを窺わせております。
というか、イシュタルのデザインって、某ヱヴァンゲリオンのサキエルの叩き台になった気がする。
どこと無く面影を感じるんですよ。



あと、長沼が人間にしては意外と強い事が明らかになりました。
ワッハマンはともかくもハンババ相手なら互角に戦っていますので、もしかしたら梅田のパワードスーツよりも高性能なのでは?とすら思えます。実際1巻以降梅田のパワードスーツは出番なし状態と化しております故。
それにしてもワッハマンは究極の兵器、そしてハンババは(腐っても)対ワッハマン用に開発されたシリーズのうちの一つ・・・と言う事は、本来ならゴーレム辺りでも人間が適う相手ではないと思うのですが。
この辺単にギャグ漫画としての演出に過ぎないのか、それとも何か意味があることなのか、個人的には後者の方に期待したいところです。実はサイボーグだった・・・と言うのは無いかなあ。ゴキブリ人間が出て来るくらいだから、あっても可笑しくはないと思うんですがさてはて。

次の巻からはワッハマン放浪編の模様。
狭い日本を飛び出して・・・はいいけど、レミィや自衛隊の面子はどうするんだよw

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2008年05月29日

まじもじるるも 1巻 渡辺航 感想

まじもじるるも 1 (1) (シリウスコミックス)
渡辺 航
4063731049



るるもの可愛らしさは異常!!


長門系の無表情キャラに分類されるんだと思うけど、長門よりは多少機微があるというか、まあ何と言うかとにかく可愛らしいのです。
なんだかんだと理屈を付けたい所ですが、言葉を重ねれば重ねるほどに陳腐で本来の魅力をスポイルする様な説明しか出来なくなりそうなので、ぶっちゃけ1行目の言葉が全てかと。


漫画としても、ひたすらハイテンションで空回りする柴木と、超ローションで回る事すらしないるるもの好対照がメリハリになっていて、すごくテンポがいいです。
そうかと思えば、イヴの話ではるるもがあのローテンションのままに鏡の前で一人芝居やっていたりというあまりに強烈過ぎる不意打ちが用意されていたりして、全く油断が出来ません。
くそう、何と言うスニーク・アタック。


それにしても柴木は魔法のチケットが自分の生命と直結していると知っても、女の子にモテるためならば躊躇なくチケットを使うとは漢ですな。
女の子をゲットする為なら生命を削る事すら厭わない・・・最近の軽佻浮薄な恋愛至上主義には辟易としているものの、ここまでやられるとただただ敬服の念です。
10代の青春真っ盛りな時期を、不名誉な仇名でもって女子から避けられる運命を背負わされた男の悲哀の物語とも言えなくもないですが。

もっとも、柴木を恋愛ヒエラルキーの最下層を落としているのは風紀委員のメガネに拠るところが大きいのですが、そのうちメガネをメインにした話も読んでみたいなあと希望してみます。


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2008年05月28日

ワッハマン 2巻 あさりよしとお 感想

ワッハマン 2 (2)
あさり よしとお
406315050X



ワッハマンを追うレミィと陸幕2課調査別室組。
謎の超古代兵器を巡って対立を深める両者・・・。


すいません。嘘です。
上みたいに書くと三つ巴の抗争劇みたいに感じられますが、実際は相変わらずのギャグ漫画。
銭湯でデパートの屋上で、銭湯で、酒屋で、微妙極まりない勝負が繰り広げられる訳ですが・・・。
ネットの評判では終盤の巻はシリアス展開らしいですが、今の状況からは全く想像できません。


さて、2巻に収録されている話の中で、昔読んだ時から気になっていたものがあります。
それは、12話の「かますのおじさん」
かますというと、僕みたいな瀬戸内海沿岸に住む人間にとっては真っ先に魚のかますが思い出される訳です。
癖の無い締まった白身で、焼き魚はもちろん、揚げ物料理にしても美味しいかますですが・・・なんでおじさんなの?

当時はネットなんて無かったので、魚とおじさんがどう繋がるか全く判らずにいたのですが、改めて調べてみるとかますというのは作者の故郷北海道ではズタ袋の事を指すんだそうです。
大きなズタ袋を提げたおじさん・・・つまり浮浪者のことだそうで。
袋の中身は生活道具一式な訳ですが、そんな事を知らない子供達から見ると一体何が入っているのか判らない不気味な袋。もしかするとあの袋に子供を詰めて拉致してしまうのかもしれない――という訳で、北海道のある地域では悪い子を諌める際に、「かますのおじさん」に連れて行かれるという脅し文句が使われていたそうです。
現代なら北朝鮮に連れて行かれるという感じですかね。

しかし、大きな袋を提げて浮浪生活をしていたワッハマンですが、14話ではボロくてもアパートに住んでいたので、まずは良かったと言うべきか。
これで犬猫に食料を奪われる心配しなくていいね(笑)。

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ワッハマン 1巻 あさりよしとお 感想

ワッハマン 1 (1)
あさり よしとお
4063150429



10000年の昔、アトランティスで造られた超兵器が現代の日本に蘇り・・・ホームレスをやっていると言う漫画(笑)。


まだこの頃のあさり氏は現在の様な強烈な毒は吐いていないものの、独特の間の取り方やナンセンスなギャグといった作風はしっかりと確立されています。

序盤の数話は現代に蘇った超兵器ワッハマン(酔っ払いのオヤジにより命名)と、現代人とのどこかズレた関係をコミカルに描く展開ですが、6話から宿敵"パパ"(名称不明)と、彼の作った変形ロボットハンババも通称レミィが登場し、一応はこの物語の方向性らしきものが提示されます。
なおレミィは普段は幼女形態で、戦闘時にはマッスルボディの人型兵器に素早くトランスフォーム変形する訳ですが、この変形プロセスが2次元の嘘なんていう次元を軽く振り切って、4次元の世界に逝っちゃってます。
もう、Zガンダムの変形がどうのこうのというレベルじゃないですよあれは。


それにしても、10000年の時の流れはアトランティスを海の底に沈め、そういう国?がかつてこの地上に存在したという事すらも忘却させてしまった筈なのに、ワッハマンと、ワッハマンと戦った宿敵との因縁は今も生き続けていて、その不毛な感情だけが唯一、かつてアトランティスという国?が存在した証となっていると言う皮肉。
こういう部分はあさり漫画の真骨頂というべきところなんですよね。


作者近影に関しては・・・何も言うまいw


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2008年05月25日

DARK QUEEN 1巻 松原あきら 感想

DARK QUEEN 1 (1) (マガジンZコミックス)
松原 あきら
406349361X



ノッカーズと呼ばれる特殊能力者を集めた犯罪組織ロッセリーニファミリーの新たなる「王」を決めるべく開催された『ロッセリーニ杯』。
それは複数の後継者候補同士が、「騎士」と呼ばれる自らの配下のノッカーズ能力者を戦わせ、最後まで勝ち残ったものが王の座を得ると言うもの。

組織の下っ端構成員で、ノッカーズ能力を持たない銀殺人は、後継者候補の一人、雫・ロッセリーニによって「騎士」に選ばれる事になるが・・・。


うー。

何だか色々な漫画やライトノベルから様々な要素を少しずつ拝借して組み上げましたという感じが強いです。
物語の設定部分もどこかあやふやな感じがして、どうにも地に足が付かない。
登場人物も結構定型タイプ(でもアレキサンダーは可愛いw)ですし、独自性というのは余りありません。


絵的にも、中途半端に癖があって、中途半端にプレーンなアニメ絵で、どっちつかずな印象。
でもまあ、絵柄そのものはいずれ慣れるものだからたいして気にはならないのですが、いかんせんバトル漫画なのにバトルシーンにあまり迫力が無いのが痛いです。
特に利根梨戦なんかは、やたらシーンが飛ぶ上にバトルにすらなっていません。

恐らく作者がバトルを端折ってでも描きたかったのであろう、利根梨と師匠との関係はベタながらも良い話だと思うけど、いつの間にか師匠は死んだ事になっていたのはどうかと。
こういうのを見ると、敢えてバトルシーンを端折ってまでやる意味があったんだろうかと思ってしまいます。


最後まで読んで感じたのは、まず結論(オチ)を考えて、それに逆算的に物語を合わせる形で描いているんじゃないかと言う事です。
結論部分に至る過程よりもまずは結論ありきというスタンスなので、過程部分をバッサリ切り落として結果だけを見せる構成になってしまっているんじゃないかなあ。
何せ一番面白かったのが番外編の温泉話という有様では・・・ねえ。
いや、貧乳菌は斬新すぎる新解釈でしたよ。そうか、貧乳は感染するのか。何て恐ろしいんだwww


なお、全体的に中二病っぽいスメルがかなりきついです。
青臭い程度なら心地良いのですが、この漫画のスメルは青臭さの上限をオーバーしておりますので、駄目な人は全く受け付けない恐れも。
要するに、あまりお勧めは出来ないと言う事で。


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タグ:松原あきら
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2008年05月19日

蒼天航路 4巻 李学仁 王欣太 感想

蒼天航路 (4) (モーニングKC (461))
李 学仁 王欣太
4063284611



雌伏の時は終わりを告げ、群雄達は野に放たれた――。

北の大地にて野心の炎を燃やす董卓の洛陽入城を阻止すべく、敢えて太平道を焚き付けた曹操。
黄巾党の旗標でお馴染みの「蒼天巳死」の4文字は、本作品中では曹操が流布した事になっています。
実際のところどうなのかは判りませんが、フィクションとしては意外性があってこれはこれで面白い。

それにしてもこの作品に登場する董卓は実に格好が良い。
横山三国志でお馴染みの髭面の狒々親父などではなく、何処となく蒙古人を思わせる精悍さを持った偉丈夫として描かれています。また、その言動も極めて独善的ではあれども、自らに対する揺ぎ無き自身を感じさせ、三国志序盤におけるヒールを見事に演じきっています。

「董卓は董卓の力で勝つから董卓なのだ」

こんな台詞がさらりと似合う蒼天董卓。素晴らしい。

また、この巻から登場の孫権も非常に合理的な思考回路の持ち主で、これまた魅力的。
風貌が西洋人臭いのは、やはり瞳が碧だったという逸話ゆえか。
実は個人的に呉の面子が一番好きでして、ゲームでも大抵呉を選んでプレイしている人間としましては、孫権が格好良い事は大歓迎なのですが、配下の武将の風貌がぱっとしないのは頂けないですね。
ま、有名どころが揃うのは孫策の代以降ですからねえ。


物語的には一気に昆陽の黄巾拠点攻略となりますし、演義と違って張宝が怪しげな術を使って官軍を苦しめたりという展開も無いので、この乱は比較的短期間で終わりそうです。
しかし乱の後には霊帝の後継者争い〜董卓による権力簒奪とイベント目白押しなので、テンションは嫌が応にも上がろうと言うものです。

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2008年05月06日

蒼天航路 3巻 李学仁 王欣太 感想

蒼天航路 (3) (モーニングKC (447))
李 学仁 王欣太
4063284476




僕が曹操と言う人物に対して持つイメージの中に、逃げ足の速さという要素があります。
逃げ足が速いと言うとやや語弊がありますから、正確に言い直すと「退き際の良さ」です。


3巻では曹操の退き際の良さが光りました。
タブーとされた党錮の禁を再調査するのみならず、皇族を囮にして叔父の仇を打とうとした蹇碩の策を看破、これら数々の十常侍の悪事を帝に上奏するに至るものの、霊帝の暗愚を見て取った曹操はそれ以上の弾劾は一切行いません。
十常侍による報復人事も敢えて受ける姿は、第三者から見る敗北を認めたかにも思えますし、ある意味事実上の敗北には違いないのですが、今意地を通したところで何ら得るものは無いと判断したら、あっさりと退き下がる。
負けは負けで素直に認め、通用しなかった手段にいつまでも執着しない事こそ覇王の資質なのかも知れません。


でもって、3巻におけるもう一つの大きな出来事と言うと、いよいよ劉備が登場した事ですね。
演義に登場する実直青年とはまた一味違う、侠の親分としての劉備がまた新鮮。
大人物なのか、それともただの天然電波なのか判然としない性格付けや、演義とは違って至って普通人な劉備の母親などなど、全くのパラレルワールドですが・・・だがそれがいい。
関羽と張飛も、関羽の方が劉備のデムパにびんびん反応したりと、従来のイメージとは全く違う蒼天世界。

着実に役者が揃いつつあります。
黄巾党もちらりと出てきましたし、いよいよ本格スタートか。


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2008年04月24日

蒼天航路 2巻 李学仁 王欣太 感想

蒼天航路 (2) (モーニングKC (435))
李 学仁 王欣太
4063284352



帝を誑かし、権力をほしい侭にする十常侍。そしてその首魁たる張譲。
水晶という女性を巡って、曹操と張譲に生まれる並々ならぬ因縁。

この展開は本作品オリジナルですが、後の十常侍との因縁、そして橋玄との出会いと言う方向に物語を牽引させる上でなかなか効果的ではないかと感じます。
また、演戯では冷血漢扱いされている曹操を、血の通った人間として描くという意味もあるでしょう。

ただ、橋玄との出会いで少年期編は一段落となるのですが、張譲の追撃がどうなったのか、また張譲に背いて曹操を放免した橋玄がどうなったのか等、多少引っかかる部分もなきにしろあらず。
やはり祖父の政治力に守られたのでしょうか。


後半は青年になった曹操が、洛陽北部尉として鬼の様な厳格さで任に励む話。
相手が朝臣であろうと罪は罪、一片の容赦も無いその姿は、まさに自らが天であり法であると言わんばかりです。
十常侍蹇碩の叔父蹇朔を打ち殺すエピソードなどは、最早確信犯としか思えない。
蹇朔の死を聞かされた時の、なんともすがすがしい顔での

「な ら ば よ し !」

発言なんて、これがどういう因果を生むか計算ずくの証拠としか思えません。
更にその疑惑を決定付けるのが、党錮の禁を蒸し返すが如くに、首謀者陳蕃の縁故の者を捜索する行為。
これは完全に十常侍に対する宣戦布告ですよね。
なるほど、水晶を巡っての因縁がここに繋がってくるのか。


まだまだ三国志と聞いてイメージするスケールの大きな展開は無く、曹操以外の著名な英雄も袁紹が数ページ登場したのみ。少年期、青年期の描写が必要なのは理解しますが、やや盛り上がりに欠けます。
そろそろ本格的に国が乱れ始めて欲しいところ。

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2008年04月18日

蒼天航路 1巻 李学仁 王欣太 感想

蒼天航路 (1)
李 学仁 王欣太
4063284344



中学生の頃吉川英治の小説版を読んで以来の三国志。
それ以外は光栄のゲームとかで多少齧った程度で、横山版三国志も読んでません。

この作品は、上の吉川版や横山版が三国志演戯をもとに書かれているのに対して、正史をベースにして、それに原作者の李氏の解釈を交えつつ再構成したものらしい。主人公も劉備ではなく曹操となっています。
曹操と言うと、狡猾さと人材マニアな所ばかりが印象に残っていますが、さて本作ではどう描かれているのか。


第一巻は曹操の少年時代を描く展開で、まだまだ後に控える大きな歴史のうねりを予感させるものはありません。
これが吉川版ですと、黄巾党の乱辺りから物語が始まるので、初っ端から歴史のうねりを感じられるのですが。

あくまで1巻は派手好きで奔放、苛烈にして傲慢な蒼天版曹操像が出来上がってゆく段階を描いていると言う感じですね。
特に爆裂団のエピソードなどは、赤壁の孔明を連想させるかのような派手で芝居がかった姿が描かれており、演戯ベースの吉川版でお馴染みの、クレバーな曹操象とは違った魅力を感じさせてくれます。
まだ登場していませんが、なんでも劉備も演戯版の実直青年とはまた違った設定らしく、自分の知っている三国志とは違った味わいがありますね。
裏三国志とでも言うか。

とりあえず続けて読んでみようと思います。
でも全36巻でしたっけ?長いな・・・。

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2008年04月15日

るくるく 8巻 あさりよしとお 感想

るくるく 8 (8) (アフタヌーンKC)るくるく 8 (8) (アフタヌーンKC)
あさり よしとお

講談社 2007-12-21
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るっくるくにしてやんよ



素晴らしく計算され尽くした構成にフイタ。

『悪魔の蘇り』と『悪魔の十字軍』は完全に対になった話ですよね。
狙ってるのがヒシヒシと伝わってきますが、こういう狙われ方は・・・嫌いじゃない。


しかし梵提寺の即身仏様ですが、生前のエピソードに恐ろしいまでの既視感を感じるのは気のせいでしょうか。
うん、きっと気のせいでしょうね。

しかし信仰に全てを捧げる少女、荘司しげみですが、その経歴や発現に恐ろしいまでの既視感を感じるのは気のせいでしょうか。
うん、きっと気のせいでしょうね。

・・・すいません、気のせいにさせてください。色々とデンジャラスなので。


デリケートなネタはさておき、なんだかここ最近南足にシンパシーを感じ始めた自分が嫌ですw

作中では変態大王として描かれている彼ですが、彼の行動を見ていると、自分の利益を確保する為には、他者の利益にも多少の配慮をしなければならないと言う事を、ちゃんと理解している節があるんですよね。

自分の利益だけを声高に主張すれば、他者もそれに倣う。
そうすれば結局は0か100かと言うパイの奪い合いか、足の引っ張り合いにしかならない。
それよりも、自分の取り分が多少減っても、他者をあらゆる意味で懐柔した方が食いっぱぐれが無い。

修学旅行の話とか読んでて、その辺感じました。
この10年程で日本人が劣化し、喪失してしまった生きる上での重要な知恵を、あの年齢で持っているとは、侮れないな南足。

この作中においては、性癖はともかくもある意味一番健全な思考回路を持っているかも知れませんw

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