
本土防空戦をテーマに描かれた短編集にして、作者初の単行本。
この本が出た当時世は空前の仮想戦記ブームだった事もあって、幻の試作機や架空の兵器を取り扱った話ばかりなのが特徴でしょうか。
特に第1話のキ-108に搭載された生体レーダーや、第2話の呪術で強化された震電に顕著。
とは言え、生体レーダーにしても呪術にしても、そんな事までやらなければならない程に追い込まれた状況を感じせるものはあり、日本が余裕で大勝利を重ねていく仮想戦記の類よりは当時の空気をリアルに伝えていると思います。
それ以外の話はフィクションとは言え、もしかしたら在り得たかも知れないというレベル。
蒸気冷却で空気抵抗を抑えて高速化を計った飛燕U型改とか、ニッケルが致命的に不足しているという窮状を踏まえた上で、苦肉の策として設計された雰囲気なかなかに面白い。
そして、そんな飛行機を操る操縦士たちも変に美化されていないのが心地良いです。
登場するのは操縦士としての誇りや、時には家族の仇と言った、割と個人的な感情で戦っている人たちばかりですが、敗北がほぼ決定的になった状況下で命を懸けて戦うには、御国のためだとか、大東亜なんちゃら圏がどうのこうのと言った抽象的なプロパガンダでは役不足なんでしょうね。
初単行本ですが作画水準が高く、この手の作品の肝である兵器のディティールも良く描けていると思います。
描く作品がことごとく負け戦メインで、作品に悲壮感が強く漂っているせいか知名度はあまり高いとは言えない作者ですが、個人的には好き。
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