【今週のあらすじ】

「俺からのプレゼントだ」
「受け取れ嘉上」
嘉上を背後の壁に打ち付けるような三田さんの渾身の一撃。
長かったエクレア編もこの一撃で決着。嘉上が負けたのを見た雑魚たちは算を乱して逃走、場に残ったのは三田とタイジ、そして播磨達だけ。
嘉上が冷酷さでもって集め、組織した嘉上版エクレアは事実上消滅と相成った。
事の終わりを見届け、三田さんの一撃を食らいノビている嘉上に手を差し伸べたタイジだが、それは嘉上にある出来事を思い出させる。
かつては嘉上も倒した相手を必要以上に痛めつける行為をよしとはしない人間だった。

仲間がオーバーキル気味に相手を痛めつけるのを止めさせ、手を差し伸べる程度の人間性は持ち合わせていた。しかし、痛めつけられた相手は嘉上の手を取る事はなく、落ちていたガラス片を掴んで嘉上に切りかかる。
嘉上の鼻の傷はその時に受けたもので、それ以来彼は甘さを捨て徹底的に相手を叩き潰す主義に変わってしまった…らしい。
そんな事を思い出した嘉上は、タイジの手を払い除け、アンタの世話にはならないと一人で立ち上がる。何かを察したタイジは嘉上の頑なな態度と傷の関連性を問うが、俺は優しくはないから教えないと憎まれ口を叩いただけで、質問には答えない。
それでもタイジは嘉上に手を差し伸べ続けるが、そんなタイジに嘉上は言う。
「…丸母さん」
「俺は…」
「――人は、優しくしなきゃダメですか…?」
「もし世界中の人間がアンタたちみたいに優しかったらと思うと、俺は悲しくなります」
「皆優しいせいで色んなもん背負って傷ついて」
「けど優しいから周りに心配かけないように無理して笑って」
「悲しいのも辛いのも表に出せずにやせ我慢と作り笑いばっかの世界になったら」
「俺は嫌ですね…」
それに対して三田さんとタイジは言う。倒れそうな花瓶に手を差し伸べる程度の優しさでいいんじやないかと。
それでその手を払われたら、両手でがっちり掴むと。
そんな問答の場に空気を読まずに現れた二人の人物。
それはすっかり存在を忘れかけられていた主人公岳と卜部。
タイジを気にかけて追ってきた彼らは、尾行していた奴をシメたついでに播磨の弟も確保していたらしい。
岳達の登場で一気に大団円モードに突入したその時、嘉上の目が妖しく光る!
タイジの手を振り払い、通路の窓際に出た彼は何をしでかすかと思いきや、突然上着を脱ぎ始める。
「…心のどっかで待ってたのかもしんないスね」
「冬に来る三田さんからのプレゼント」
そして窓から上着を投げ捨てる。
次は春を探しに行くと言って。
【感想】
あらすじ長えよという話はさておき。
結論としては、やっぱりかがみんは良いツンデレでしたよ、という話。
・傷と苦い記憶
まずかがみんが元々はあんな人じゃなかったという話から。
前回の話の回想で、倒した相手に馬乗りになって徹底的に殴りつけるシーンがありました。
この時彼は完全に無力化した相手を見下ろして「これでもう動かないだろ」と言っていて、その様子からは何かに対する恐怖心を必至で振り払おうかとしている様な余裕の無さを若干感じていたのですが、その答えが今回描かれた傷の話。
何気に相手に情けをかけたら、仇で返されてしまった。だからもう情けなんかかけてやんない。
簡単に言ってしまえばこれだけの話なんですけど、ここにかがみんのチキンハートぶりが伺えてもう可愛くて仕方ないです。
バイオレンスの世界に身を置く以上は、窮鼠猫を噛む的に不意打ちを食らうことも、恩を仇で返されることも本来なら覚悟してなきゃなりません。
仮にバイオレンスの世界でなくても、良かれと思ってやった行為に対して、相手がきっちりと応えてくれる保証なんてどこにもない。
それだけに、思わぬ反撃を受けた事が原因でひねくれてしまったかがみんは、元来良い意味で弱くて純粋なタイプの人間だったのだろうと思われます。
純粋だからこそ、理不尽を受け入れることが出来ない。受け入れられないから極端に走る。
いずれにせよ冷酷に徹することが本意ではなかったというのはよく分かりました。
・でも結構意地っ張り
上で書いたように基本的にかがみんは心の強い人ではありません。強いなら三田さんの様に、自分を傷つけた相手でも受け入れていたでしょう(実質的に拒絶されたヒラオリはどうなの?という話はさておき)。
しかし、彼は心が弱い反面自尊心は非常に高いらしくて、例えば傷の出来事が原因でひねくれてしまった事を泣き言や言い訳にしたりは決してしませんでした。それどころか最後まで憎まれ役を通そうとした。
シュガーレスという漫画が登場人物の主義のぶつかり合いを描く漫画だとするならば、かがみんの『主義』は意地とやせ我慢でしょうねえ。
調子が良いようでいて、策士のようでいて、その実一番不器用な男、それがかがみん。
・自虐
「もし世界中の人間がアンタたちみたいに優しかったらと思うと、俺は悲しくなります」

この一連の台詞、三田さんやタイジに向けたもののように思えますけど、台詞の中の一部の単語を反対の意味の言葉に置き換えるとそのままかがみん自身の事になってしまう。
冷酷であろうと自分の心を押し殺して強がって、誰にも本心を言えず無理してやせ我慢して。
「俺は嫌ですね」の一言は今の彼自身のポジションそのものに対しての台詞に思えます。1コマ目のかがみんの顔がどことなく自嘲気味なのは気のせいではないはず。
とは言え、優しさを持って生きていくには裏切りや憎しみを受け入れられる強さが要る。それも持ち合わせてないかがみんにとってはどの道世界は厳しい。
心の弱い人間にとってはこの世は八方塞がりなのか…と、思いが袋小路に入りかけたところで、断ち切るように岳達が登場した訳ですけど、これは単に結論が出そうにない命題を断ち切るための登場ではなく、心が弱いなら自分を理解して支えてくれる様な仲間を作ればいいじゃない!という一つの回答だったんですね。
・コートの謎
最後にかがみんが脱ぎ捨てたコート。
なんで夏にまであんなの着ていたのかというと、かがみん曰く「冬に来るサンタさんのプレゼントを待っていた」からだそうで。
作中で三田さんが仲間の事を「春」と表現していましたが、その例えで行くなら「冬」はさしずめ孤独でしょうか。
エクレアの頭となっても心の中は常に寂しい冬で、心のどこかで三田さんに救いを求めていた。それを「冬に来るサンタさんのプレゼント」と表現しているのかな。
なかなか叙情的な表現だと思いますけど、なんだか煙に巻かれたような答えではあります。
本人も結構暑かった様で、コートの下は半袖なのには軽く笑いましたが…。
まあ他にも「本心を押しこめ包み隠している」事に対するオマージュだとか、冷酷であろうとする「やせ我慢」を視覚的に表現しているとも解釈できますよね。
コートを脱ぎ捨て、春を探しに行くと言った彼は、もうあまり意地を張ってやせ我慢をしないで、信頼できる仲間を探そうと決意した訳ですけど、かがみんはやっぱりかがみん、ツンデレは死ぬまで治らない病気なので、その道程は決して平坦ではないだろう。
…まあ、エクレア編を突き詰めて考えると、今回のオチで落ちきってない部分もあると思いますが、最後の最後で細川節大爆発だったのは良かったと思います。
さて、次週から新展開。果たしてヒラオリの復権なるか?(そこか)
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