アガペ 3 (MFコミックス)
石黒 正数

2巻までは舌足らずな部分がありつつもそれなりに作品のテーマである絶対的な利他愛でもって犯罪者と交渉するという路線を貫いてきた本作品ですが、噂通りというかなんと言うか、3巻で凄いことになってきました。
一応は猟奇殺人犯にして激甚中二病患者の七尾アキラを巡って、交渉術らしきものをほんのチョッピリながら発揮するシーンもあったり無かったりする訳ですけど、そんなものはオマケ以下と言い切ってしまえるレベルなのが厄い。
物語そのものも当初の路線が行き詰まってしまったのか、新たな物語の柱を探そうとして迷走を開始していて、浦沢直樹先生の「MONSTER」を連想させるかのような、作中世界における過去の断片が挿入されたりしてはいるのですが、ほとんど投げっぱなしに近い形で終わったMONSTERをリスペクトしても、それは当初の路線以上に茨の道ではなかろうかと思えるわけです。
さらに恐ろしいのは、ストーリーが迷走しているのと同時に絵も恐ろしい勢いで迷走を開始したことで、1-2巻当時はぎこちないながらも端正な絵を描いていたと思うし、コマ運びに関してもそれなりに練られていたのが、3巻に来てからは前衛的とすら呼べるレベルに崩れてきました。
会話シーンにおける七尾アキラの妙な所作(ジョジョポーズに近い)、一体誰が得するのだろうかと考え込んでしまう様な劇画調のワンカットと徹頭徹尾かんたん作画に徹したワンカットが織り成す不可思議空間…。
例えば第19話ではヒロインはるかさんはやたらかんたん作画にされている一方で、割とどうでもいいキャラがカップラーメンを吹くシーンでは吹き出した麺の一本一本まで神経が行き届いた作画がなされていて頭を抱え込んでしまう。本当、誰が得するんだろ…。
こうした不可思議な作画の乱れに何か意味が込められているのか、それとも原作者の迷走が作画担当の石黒氏にまで伝播してしまっただけなのかは今となっちゃ知る由もないけど、ただこれはある意味においては"凄い"漫画だと思う。他人にも読んで欲しいとは思わないけど、しかし一度読む価値はあるとも思えます。伝説と謂れる様なクソゲーを一度は体験して欲しいというのと似た意味で。
アマゾン等のレビューを見て、なんだそうなのかと回避するにはこの強烈無比な地雷感は惜しい。
そういう訳でラストである4巻の感想も近日中にアップしますよ。
アガペ1-2巻感想




