漆原 友紀

第一巻が世に出たのが2000年。
それから約8年間、単行本の発売日が近づく度に発売までの日数を指折り数えて待ちわびるのが恒例となっていました。
そんな蟲師も、この10巻で降幕です。
まさに完結でもなく終了でもなく降幕。
蟲師らしく静かに淡々と、それでいて読者の心に残すべきものは残して幕は閉じられました。
個人的には7巻の「棘の道」で仄めかされた僅かな伏線はどうなったよという気もしますが、しかし蟲師という作品の持つ空気の中では「棘の道」編はやや異端であり、そこから伏線を積み重ねるようなドラマツルギーは蟲師という作品が当初より目指している方向性とは違うのも事実。
よってあれはあれで蟲師世界を構成する一要素ではあれど、蟲師世界の在り様を変化させるものでは無いし、あってはならないんだと思います。
ギンコはあくまでいち蟲師ですしね。人と蟲の架け橋になるような存在では決して無い。
冒頭の「光の緒」に登場するゲンが某源元をそのまま幼くしただけに見えたのは疲れのせいでしょうかw
それともゲンという名前はああゆうヤンチャ坊主のイメージがあるのでしょうか。
そんなどうでもいい話はともかくとして、最終巻だけあって感傷的ムード5割増しでしたね。
もともとこの作品は記憶をテーマにした話が多いのですが、今回は特に記憶の要素が強く盛り込まれた話が多く、感傷に浸らせる効果が強かった。
草木の記憶、円環に囚われた記憶、ヒトだった頃の記憶…。
この巻をもって、以降は記憶の中の存在となってしまう蟲師という作品を象徴しているかのようでもあります。
そして最終話の「鈴の雫」に関してですが、人の世界と蟲の世界との接点である山とその間に立つヌシの物語――「やまねむる」や「草の茵」などで幾度となく描かれてきたテーマであり、それらの集大成とも呼べるエピソードに仕上がっていたと思います。
それぞれ別の理に生きる二つの生命も、やがては一つの所へ還るという"約束"。
それこそが真の意味の理なのかも知れません。
なお、最後の最後でに連載前の読みきり(事実上の第一話)に登場したふたつめの瞼の裏を出してきたのも憎い演出でした。
…と言う訳で蟲師これにて降幕。
漫画はひとまず終わってしまいましたが、ギンコの物語は終わりません。
最終巻なのに淡幽先生や化野さん等の準レギュラー陣が出てこなかったのも、蟲師世界そのものが終わる訳ではないからでしょう。
そして、このブログにおける蟲師レビューも終わってはいません。
廻陋に囚われるのはまだ早い。
★蟲師 9巻感想
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